2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧
「魂はみずから生気あらしめている肉体の中よりも、むしろ自分が愛しているものの中に住む、なぜなら魂は肉体の中に生命を有しているのではなく、むしろ肉体に生命を与え、自らが愛しているものの中に生きるからである。」(十字架の聖ヨハネ) 1 秋だ。遠…
ヘモグロビンは酸素を二酸化炭素に変える赤色、葉緑素は光を酸素に変換する緑色、かつて原始的な細胞が真核生物になり、35億年以上昔に、植物細胞と動物細胞に分かれたころから、二つの種族は共生関係にあったのだと本で読んだ。樹木はわたしの遠い祖先が…
宇宙の始まりは無であり、その無の宇宙は量子トンネル効果によって、虚数時間の世界からこの実時間の世界に現象し、無は真空となり、真空はその無秩序性によってエネルギーを持ち、それによって空間そのものを斥力となって押し広げていき、そうすることによ…
わたしは無でできている、その無は世界がわたしの中で裏返しになることで成立している。わたしは裏返しだった。つまりかつてわたしがわたしだと感じていたものの反対側にわたしはいるのだった。 昔は自分を畸形のように考えていた、でも実際には畸形でさえな…
どこにも証人がいなくても、誰からも承認されなくても、わたしをおぼえている人がいなくなっても、このわたしがここにいた事実は消えない、事実は事実なのだから。そういう意味では、人の行いは永遠に消えない、人類が絶滅して、生物が滅びて、地球が滅びて…
わたしは、あなたにわたしをはなしかけることで、わたしというみちを、かざりつけていく、まなざしのむこうで、かんがえながら、くらがりのおくにひいていく、あなたは、はなされてさいている、そこでだまっている、いくつかのわたしを、かぜになってとおり…
(このエッセイはとある友人の結婚を祝うために書いたものです) XXXさん、ご結婚おめでとうございます! はい――という訳で。今日はですね、この場所をお借りして、結婚について、というか、結婚、という文字について考えてみようと思います。なので、こ…
様々な細部に至るまで、まことしやかにカミ宿らせて、宿り木みたいに清らかに、宿るヒタイに秘められて、さかさになった、五月雨みたいにしらしらと、鳴りそめている、樹の子のムスコたちが、樹の葉のムスメたちが、むすびついてはコケムシて、言祝ぐように…
いつでもどこでも、シラフのふりして、知らんぷりして、ブラフをかけてしまう、いつでもどこでも、大事なことを、しらべもしないで、しらせもしないで、しらをきってしまう、とってもすなおな、わたしたちの愛は、ミロクのシルクの糸よりも、地獄の天からお…
ひとさらひらいた、人さらいたちや、人たらしたちや、人さらしたちが、人さがしたちが、出没するって、そういう噂の、ヒンガシの野に、龍たちの棲む、彼岸へむけてのかぎろひが立っていた。 * * * ひらひらと、薔薇色とスミレ色になってゆれている、日向…
わが子は十余になりぬらん、巫(かんなぎ)してこそ歩(あ)りくなれ、田子の浦に汐(しお)ふむと、いかに海人集ふらん、正しとて、問ひみ問はずみ嬲るらん、いとをしや(梁塵秘抄より) * * * 彼女は人魂の霊力を増幅させる、いにしえからの能力を学ぶ…
すみだ河、にかかっている、言問橋(ことといばし)の、袂にたって、自分の由来をこととい始めていたの。おととい、生まれたばかりのわたしのことをことほいでいた、朝露の球面によじれて、ほころびはじめている、木苺たちの庭園に向かって、したように。 顔…
「センモンカ、たちのあいだでは、あまたの異論が、ホウセンカ、みたいに、はじける様子で、入れ子状になって、はじらいながらまどろんでいる、イロンという名の、ヒミツの古城が、情緒不安定気味に、複雑怪奇な旋律を奏でる、そんな呼子笛を吹いている、小…
1 大勢の人たちが、慌ただしそうに歩いていく。その人影に、紛れるみたいにして、僕は、橋本駅に立っている。そこは西口の、JRから、京王線へと続いている、乗り換えのための連絡通路だった。 急ぎ足の人たちでできている、温度や靴音や、構内独特の、かす…
「そう、赤いおでこをした楓子(かえでこ)ちゃんだったの、わたし、たくさんの猫たちのスミカになっているというトネリコの木の上で、おどおどと挨拶をする、踊り子ちゃんたちと一緒だったの、わたし、トルコ石とトルマリンでできた、何かヒトを不安にさせ…
白くて、つややかで、ちみつな鱗片に被われた、きらめける、くちなわの皮膚で、リリフリリ、皮膚、で、できている、シンセイ、シィツの、いりくちにまで、流された、かけらのような、超新星、宙に引く尾は、包帯をする、銀貨みたいな、玉の緒の、――ペンダン…
いつまでも、頭上にシリウスをいただいている、知恵の梢のあしさきで、竜たちがうごめいている。 早ヶに、想起するよりあきらかに、わたしは、またたくように逃げようとしてしくじり続けていたの、そうして自分をくじいてしまい、気づいたらわたしは、竜たち…
ぼくはかみさまにささげるしをつくるよ。しはつりばりみたいなかたちをしてるから、かみさまののどもとにひっかかって、つりあげられるんだ。 でもかみさまなんていないってきみはいうね。かみさまはことばだって。でもことばってなんだろう?いないってなん…
「ニセキレイな黄鶺鴒(きせきれい)が奇跡の霊になって奇声をあげている、蒸し蒸しした湯圧のふしぶしで、赤い色の紅玉たちに点綴されている、水のような宝石になった虫たちがつぎつぎにしたたっている、雨林(うりん)の合間で、アマテラスの花をちぎって…
あなたのかんばせの道沿いは、柵と策とで囲まれていた。その溝の口の駅に水のように澄んでいる人が、自分をポケットから落としてしまった時にできた、切り傷のついた、縁取りを気にしながら正しいことを言っているのに、いつでも気圧されてしまうから、 わた…
さいしゅう かいけつして、カンガルーの国に、移送されたわたしは、むしとりあみで舗装したみちを、アルコールなしで、ゴールをめざした。わたしを無視して、無私なわたしはたわしでよかった、たわわになった、かたわでもよかった。大地の上で。 大事なこと…
ミンカでミントがミンクの毛触りをして、虫のしずくのように、ひとみをみたしていたのを、まなかいにして、すべりだいを呑み放題にしたような、転落していく人生を飲みほして、永遠に若返ったの。 だからたからものをたかりにやってくる、おたかくとまったハ…
彼はあの冬にここからいなくなったそしてフィクションの世界の住人になった彼がたどり着いた場所について、きみは考える きみはこの寒い星にきた異邦人だと感じるなぜ人に意識があるのだろうどうして人は、うまくいかない時にだけ理由を考えるのだろう彼は命…
それは随分古い、昔の話だった。まだ帝(みかど)が京の御所におわして、けれどもこの国の権力は武家政権のものだった時代の、遠い話だった。時代の趨勢を決める、大きな合戦が関ヶ原で起きた。血と硝煙と、人馬と土ほこりとがあたりに立ち込め、悲鳴と怒号…
――するるするると、曲がりくねって伸びていく、蔓草たちに取り巻かれている、にぎやかな街角が、そこにあります。 様々に着飾った人々の群れを縫うようにして、どこまでもどこまでも歩いていきます。 そうしてそうして、曲がりくねった坂道を昇ると、濃い緑…
ひとつの戯曲を思いつく。「エデンの林檎のアップルケーキ」って、いうタイトルの戯曲。その舞台では、原罪は砂糖漬けにされている。知の背徳は、シナモンの匂いを薫らせる。――苦い紅茶で口直しするために、人類は荒野に追放される。荒野でハーブを育てるた…
クリスマスだ。街は人でたくさん。だけれど僕はもうたくさんだ。結局なんにもなりはしない、どんな音楽が流れていても、どんな本を読んでも、画集を紐解いてみても、心が晴れることなどある筈もない。 新宿の街のスクランブル交差点からストリートヴューを見…