note転載44(End) 折り返されて

「魂はみずから生気あらしめている肉体の中よりも、むしろ自分が愛しているものの中に住む、なぜなら魂は肉体の中に生命を有しているのではなく、むしろ肉体に生命を与え、自らが愛しているものの中に生きるからである。」(十字架の聖ヨハネ) 1 秋だ。遠…

note転載43 血統書

ヘモグロビンは酸素を二酸化炭素に変える赤色、葉緑素は光を酸素に変換する緑色、かつて原始的な細胞が真核生物になり、35億年以上昔に、植物細胞と動物細胞に分かれたころから、二つの種族は共生関係にあったのだと本で読んだ。樹木はわたしの遠い祖先が…

note転載42 虚数時間について

宇宙の始まりは無であり、その無の宇宙は量子トンネル効果によって、虚数時間の世界からこの実時間の世界に現象し、無は真空となり、真空はその無秩序性によってエネルギーを持ち、それによって空間そのものを斥力となって押し広げていき、そうすることによ…

note転載40 ひとのいとなみ

どこにも証人がいなくても、誰からも承認されなくても、わたしをおぼえている人がいなくなっても、このわたしがここにいた事実は消えない、事実は事実なのだから。そういう意味では、人の行いは永遠に消えない、人類が絶滅して、生物が滅びて、地球が滅びて…

note転載39 わたる

わたしは、あなたにわたしをはなしかけることで、わたしというみちを、かざりつけていく、まなざしのむこうで、かんがえながら、くらがりのおくにひいていく、あなたは、はなされてさいている、そこでだまっている、いくつかのわたしを、かぜになってとおり…

note転載28 なまえは、シルカ?

白くて、つややかで、ちみつな鱗片に被われた、きらめける、くちなわの皮膚で、リリフリリ、皮膚、で、できている、シンセイ、シィツの、いりくちにまで、流された、かけらのような、超新星、宙に引く尾は、包帯をする、銀貨みたいな、玉の緒の、――ペンダン…

note転載27 竜たちが見ている

いつまでも、頭上にシリウスをいただいている、知恵の梢のあしさきで、竜たちがうごめいている。 早ヶに、想起するよりあきらかに、わたしは、またたくように逃げようとしてしくじり続けていたの、そうして自分をくじいてしまい、気づいたらわたしは、竜たち…

note転載26 かみさまにささげるしをつくる

ぼくはかみさまにささげるしをつくるよ。しはつりばりみたいなかたちをしてるから、かみさまののどもとにひっかかって、つりあげられるんだ。 でもかみさまなんていないってきみはいうね。かみさまはことばだって。でもことばってなんだろう?いないってなん…

note転載24 さよなら、ミゾノクチのえきで、澄んでいるひと

あなたのかんばせの道沿いは、柵と策とで囲まれていた。その溝の口の駅に水のように澄んでいる人が、自分をポケットから落としてしまった時にできた、切り傷のついた、縁取りを気にしながら正しいことを言っているのに、いつでも気圧されてしまうから、 わた…

note転載23 さいしゅう、かいけつ

さいしゅう かいけつして、カンガルーの国に、移送されたわたしは、むしとりあみで舗装したみちを、アルコールなしで、ゴールをめざした。わたしを無視して、無私なわたしはたわしでよかった、たわわになった、かたわでもよかった。大地の上で。 大事なこと…

note転載22 トガをせびったゆびさきの、姫さま

ミンカでミントがミンクの毛触りをして、虫のしずくのように、ひとみをみたしていたのを、まなかいにして、すべりだいを呑み放題にしたような、転落していく人生を飲みほして、永遠に若返ったの。 だからたからものをたかりにやってくる、おたかくとまったハ…

note転載21 喪に服する

彼はあの冬にここからいなくなったそしてフィクションの世界の住人になった彼がたどり着いた場所について、きみは考える きみはこの寒い星にきた異邦人だと感じるなぜ人に意識があるのだろうどうして人は、うまくいかない時にだけ理由を考えるのだろう彼は命…

note転載18 エデンの林檎のアップルケーキ

ひとつの戯曲を思いつく。「エデンの林檎のアップルケーキ」って、いうタイトルの戯曲。その舞台では、原罪は砂糖漬けにされている。知の背徳は、シナモンの匂いを薫らせる。――苦い紅茶で口直しするために、人類は荒野に追放される。荒野でハーブを育てるた…

note転載17 死にたくなるクリスマス

クリスマスだ。街は人でたくさん。だけれど僕はもうたくさんだ。結局なんにもなりはしない、どんな音楽が流れていても、どんな本を読んでも、画集を紐解いてみても、心が晴れることなどある筈もない。 新宿の街のスクランブル交差点からストリートヴューを見…

note転載6 ラピスラズリ

赤い柘榴の実が黒い道路に落ちているその傍で風に揺れているカタバミの花のように白いきみの亡霊は金木犀のように甘い匂いを薫らせていたっけ藍色の枯葉が薄い桜色の空に散っていくのを背にしてハチミツの色をした豊かな髪の毛が湿った空気に輝いていたっけ…

note転載5 シダリイズ

自分が殺されてしまったことを知った神様が両眼から三つ編みの血の雫を流しているとても高い塔の見晴らし台で緑色の水溜まりに寝そべって裸になった彼女の心はゆびさきで瞳の奥に絵を描いているきみの母親はまるできみと瓜二つ淡い紫色とスミレ色が混ざり合…