note転載26 かみさまにささげるしをつくる

ぼくはかみさまにささげるしをつくるよ。
しはつりばりみたいなかたちをしてるから、
かみさまののどもとにひっかかって、
つりあげられるんだ。

でもかみさまなんていないってきみはいうね。
かみさまはことばだって。
でもことばってなんだろう?いないってなんだろう?
きみはママやパパやしゃかいとかあいということばのために、
かんたんにいなくなれるくせに、
きみのママがあたまのなかでもはなさないどうぶつになったら
きみはきっとママがいなくなったことをかなしむくせに。

きみはかみさまがそこにたっているのをかんじたことがないんだね。
じぶんのうしろのしょうめんにたって、
めかくししてるのがわからないんだね。

かみさまがへびのようにそこらじゅうにはいりこんでいるのに、
きのこみたいに、こけむすみたいに、
つるくさみたいに、すうじみたいに、りゅうしみたいに、
りょうしみたいに、りょうしんみたいに、
――そこらじゅうのすきまから、
つぎつぎつぎに、じぶんのりょうてをあげながら、
あてがいながら、
きみのたましいをもちあげているのが、
きみのさかなをつりあげているのが、
きみのせぼねにすとろーみたいにつながって、
へそのおみたいにつながって、
きみをねむらしたり、
あたまのあなのなかにおとしたり、
あめをふらしたりしているのが、
わからないんだね。

ぼくはついついそらをあおいで、
ふらふらしながら、
かべにぶつかってたおれてしまう。
そしたらせっかくつりばりにひっかかったかみさまも、
にげてしまうんだ。
どこかにつれさられていくみたいにね。

でもぼくはかみさまとつながっていたから、
かみさまがそらのむこうににげていくときには、
ぼくもそのままつれてかれるんだ、

ぼくがせみのぬけがらみたいにとうめいになって、
そのぬけがらをかみのようにふるわせながら、
いろんなことをはなしてしまうのもそのせいなんだよ。

はんがーみたいに、
かみさまのからだからでっぱっているしにぶらさがって。

――だんだんあたりはさむくなってきたね。
せいそうけんにはかみさまやてんしさまがすんでいるって、
そういうことをいわれていたじだいもあったんだ。

いまはそこからはいなくなって、
さいしょからさいごまで
どこにもいないところにいるんだっていってた。
ぼくたちのまわりは、
さいしょからさいごまで
いちどもそこになかったものたちにかこまれているから、
やっぱりかみさまはすぐそばにいるんだね。

――ぼくたちは、
ほんとうは、さいしょからさいごまで、
どこにもそんざいしない
くににすんでいるんだ。

きっと、とおいみらいのはてだとか、
とおいかこだとか、
とおいうちゅうのむこうがわとか、
とおいいじげんのべつのばしょとか、
そういうところにいるひととかいのちにとっては、
ぼくたちはさいしょからさいごまで、
どこにもそんざいしてはいないんだよ。

だれかはきっと、だれかがいないとそこにはいない。

――ねえ、はなしがつうじないってことよりも、
そんざいがつうじないっていうことのほうが、
ずっとすごいことだとおもわない?
そしてずっとかなしいことだよ。
それからとってもすてきなことだ。

だってそうしたら、
はなすことも、あうことも、
そうぞうすることさえもないのだから。
あいすることも、にくむことも、
かなしむことも、
それをほしがることも、
ほしがったことも、
これからそれをほしがることも、
それがなくってかなしむことさえ、
ないのだから。

かみさま、もしかしたらそういうもののことを、
かみさまっていうのかもしれないね。
だからきっと、ぼくはだれかにとっては、
かみさまのいちぶで、だれかにとっては、
かみさまでもなんでもないし、
まったくなんでもないことのせいで、
やっぱりかみさまのすぐそばにいるんだ。
そうしてうちゅうのむこうのだれかさんにとっては、
ぼくはかみさまとおなじように、
さいしょからさいごまでどこにもいないんだ。
ぼくはかみさまとひとつになっているんだ。

でもそれは、とてもさむくてつめたいことなんだよ。

だからぼくはきみにいおう。
このうちゅうのかたすみで、
ぼくをみつけてくれてありがとう。
そしてぼくは
みつけられてしまったことが、
とってもざんねんにおもっているんだ。
ざんねんだけれどしあわせだったんだよ。
だってきみはとてもすてきなひとだったんだから。

かみさま、
ぼくたちはたぶんなにかのきせきでできているから、
そういうことをかんじたときに
ついくちをついてでてしまうのがかみさまなんだから、
なにかしんじられないくらいすてきなことがあったら、
それはきっとかみさまっていうのが、
ことばのただしいつかいかたなんだ。
それはそういう、
しゅうかんからきたやくそくなんだ。

ぼくはかみさまにささげるしをつくるよ。
しはつりばしみたいなかたちをしてるから、
だれかがのったらふらふらゆれる、
ぶらんこみたいに。

――うちゅうはすごくちいさくて、
すごくふるえているひもでできているって、
ほんにかいてあったから、
ぼくはうちゅうでいちばんちいさなものに
ささげるためのしをつくるんだ。

しはいつでもぼくといっしょだった。
へそのおみたいなかたちをしているから、
しっぽみたいなかたちをしているから、
それがじぶんについていたときのことを、
おもいださせてくれるんだ。

ぼくたちはいつか、
あたまのなかではなさないどうぶつだった。
しをつくれるし、しになれるから、
いまでもきっと、
そのばしょにいけるよ。
いきたいときに。

ぼくたちじしんになるまえのばしょまで。

(2017年)

 

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