note転載31 赤坂見附の、ミトコンドリアのお嬢さん

「センモンカ、たちのあいだでは、あまたの異論が、ホウセンカ、みたいに、はじける様子で、入れ子状になって、はじらいながらまどろんでいる、イロンという名の、ヒミツの古城が、情緒不安定気味に、複雑怪奇な旋律を奏でる、そんな呼子笛を吹いている、小人のような呼子嬢だったの、わたしは、明日のジョーみたいに真っ白な灰になって、ディナーショーを開く売れ残りのアイドルになって、富士の高嶺に降る雪みたいな白い衣装で、地下鉄の出口に残っていたの。そうでしょう?この街は、色んなアヤマチやステバチやスズメバチの発育を、有耶無耶に許してしまったせいで、同情がましい泥鰌(ドジョウ)たちの群れにのっとられたみたいに不安定な土壌になり、様々な抒情詩たちが響きあう街、上場企業たちと官僚たちの権謀術数とケンボウショウに、健康志向が混ざり合う街になっていたの、だから、足許がおぼつかないのはあなたのせいじゃない、安心してね」

 「ネコの目みたいに目まぐるしい、イジョウキショウ、銀杏(イチョウ)の木の葉たちの、季節の変化にしたがって移調していくグラデーション、樟脳の匂い、誰のせいでもないホウシャノウ、オウムシンリキョウ問題とホーホケキョウ、そういうものに汚染されたウエキバチみたいに始末の悪い、ウイキョウの花かおるトーキョー都庁に登庁していく、道の途中で、ドジっ子なせいで、迷子になっては、老子孔子孫子と一緒に、素粒子力学のことや人類史の観点から医療問題のことについて考えている、祇園育ちで器量よしの舞子さん(舞妓さん)とハチアワセしたわたしは、こんな突然変異的な存在はわたしひとりじゃないのね、よかった、などと考えて、やがて何となく猥雑に感じられる、あの東京メトロ丸の内線の改札を出て行ったの。風変わりな舞子さんたちは、後ろ姿をみせながら、ぴょこたんぴょこたん、スタンプみたいな音をたてて、階段を降りていくの」

 「マイコプラズマ肺炎にかかってはプラズマ亡霊たちの声におびえる、そんなひとびとの光景を、赤坂見附のホームの暗がりで、ずっと見てたの、ヤミに捕えられたものたち、オウム病クラミジアにかかった子供たち、きっとアセチルコリンを吸いすぎたせいね、白昼の中でもセンメイになる、アカミザカナのたくさんのキレハシが、階段みたいにシキツメられているのを、見つけてしまったわたしは、おいしそうだなあ、となんとなく思いながら、うわのそらになって、つったっていたの、イチジクみたいに、何も咲かない、でも何かがある、一字一句も無意味を持たない、そんな音楽、ミクソリディアンの諧調で、ケルト音楽みたいに渦まいて、海馬のどこかで、細胞という細胞が、ミトコンドリアを歌わせながら、わんさかわんさか、活性化してた。体中を、マイクロ単位のエクトプラズマがかけめぐっているのね」

 「ダイジョウブ??そうですね、体調はしだいに退潮してくの、隊長、この都庁からは、退庁したい、組長、係長、ハッピャクヤチョウの情緒のしらべ、八百万のカミガミたちと、ガミガミガミガミ、口手八丁で口角泡を飛ばす、八百万の、野鳥たち、それらについて観察し新旧のメディアたちに情報を提供する、日本野鳥の会のスタッフさんたち、そういうものたちに囲まれて、ツツシミぶかく、メイソウしている、カスミソウみたいに、ソウメイなわたし、トウメイなわたし、セイメイを持たない、メーメーないては、セーセーしている、子羊みたいに従順なわたし、そんな気分に囲まれて、そんなヒロシに騙されて、町内一の腸内環境をもっている超能力者のお嬢さんで明日のジョーだったわたしは、未来の女王、つまりはプリンセス。お蝶夫人もびっくりの、情報情緒の諜報ネットワークシステムを、シナプスみたいに、蝶々たちの間に構築していたの。それはどんな法人たちも、異星人たちも、バタフライ効果によって予測できない、でもパターンがないとはいえない、神出鬼没のシステムで、そのせいでちょっと不調法、いろいろな人に対して、粗相をしちゃっていやしないかしら、と、眺めてはらはらさせられる、そんなチョウホウシステムだったけど、重宝だったわ、ドジっ子上等、ざけんじゃねーぜ、たくさんのドジっ子注意報と、ドジっ子追放令を、こわがるあまりに、必死になって書いたソースコード、ロシアのスパイも形無しだった、コードネームはトシコちゃん、神経症的な行動、軽挙妄動、そんなモードで、黄道十二星座の下を、それでも地球は回っているのね、わたしたちはくるくる回るビー玉の表面に織り込まれた地形の上を、ロバチェフスキー平面的な2次元座標上の浮動点みたいに、居心地の不動産屋さんめぐりをしながら、ふわふわしてるの」

 「トウキョウ、という言葉は、東京タワーで象徴されるし、東は茶色いけど京は赤い字なので、東京はだいたい赤いのだと思っていたの、あざやかな色で刺繍された、綾織り模様みたいに、あやとりをしたくなるような、そして小躍りをしたくなるような秋空の下、とりどりに発色させていく、あやういわたしは楓の木の葉の森に棲む朱いコウノトリみたい、そう、この街は全体的に紅い、色たわやかな東京たちの群れが、地下鉄に乗ってる、わたしたちをつつみこむ、東京、という文字が、透き通るようなヘビの群れになって、窓の外にいる、線路から市ヶ谷だとか、飯田橋を過ぎていく。ヘビさんたちは、良い子にしててね、ヘビたちはわたしから何がほしかったのだろう、同情してほしかったのか、同調してほしかったのか、同乗してほしかったのか、それとも道場破りをするための度胸がほしかったのか、泥鰌たち、彼らの群れにのっとられたせいで、大量生産される抒情詩たちが風に吹き飛ばされて転がっていく、迷惑メールみたいに消えていく、と言いたい気持ちにさせられてしまう、この街の気配がいやになって、ちょうど細胞という細胞が、ハイパー分裂状態になって、挙動不審になって、ドキドキしている時だったから、どうしたいのか分からなかったの」

 「そういうわけで、こんな風に、チョウ能力者のドジっ子のお嬢さんたちは、トトロたちと一緒になって東京メトロに出没するの、それは噂に名高い丸の内OLたちの間で、ウイルス性の化学兵器みたいに広がっていく都市伝説なの。その生態および正体については、ホウセンカみたいに香ばしい、うららかなドジっ子専門家たちのあいだでも、様々な視点におけるウロンさによって、様々な異論が噴出しているの、もうご存知ね。純白のドレスを着て、明日のディナーショーに出席をする、灰になった明日のジョーの身体からよみがえったフェニックスみたいに不死身なわたしは、白妙の、富士の高嶺に生息している、伝説のフェネックギツネみたいに、山の手一帯を恋の炎で包み込む、八百屋お七の末裔みたいに、超絶かわいい売れ残り美少女アイドルだったから、超絶技巧のイ調の調べを、ハッピャクヤチョウで歌っているの、八百万の、カミガミたちと、野鳥の会と、ミトコンドリアのミクソリディアン、リディアン、ドリアン、エイリアン、不思議の海のナディアもびっくりするわ、奇妙なアイデア。そぞろな吐息をつきながら、ウキワみたいな、ウチワみたいな、チワワみたいな、トキワ樹の木陰で、ホウジンたちも、イセイ人たちも、お蝶夫人たちも、見とれていたの、おばかさんね。クジョウもクジュウも、忘れていたわ、だってほら、都会に広がるこの秋空は、とっても高くて、あんまりたくさんのチョウたちが舞っていて、色とりどりの舞子さんだとか迷子さんだとかで、埋め尽くされていたんだもの。それは空から降ってくるたくさんの花たち、雪たち、光たち。そのせいで、見ているわたしはうわのそら。ミトコンドリアは、調律してたの、調子にのって」

(2017年執筆 2018年完成)

 

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