note転載23 さいしゅう、かいけつ
さいしゅう かいけつして、カンガルーの国に、移送されたわたしは、
むしとりあみで舗装したみちを、アルコールなしで、ゴールをめざした。
わたしを無視して、無私なわたしはたわしでよかった、たわわになった、
かたわでもよかった。大地の上で。
大事なことを、さいごに考えるサイコヤロウのわたしは、ウスバカゲロウみたいね、ジョロウグモみたいね、
わたしたかけらがみんなくだっけってしまっていたから、
テトテで繋いで、羽根にしたの。
腕組みしているツラをした、タンチョウヅルみたいなあなたは、
鏡の国で、ひかがみを怪我して、
穢れた部分を消毒してたら、聖徳太子みたいな耳になったの。
あたしの太子様。
それは、九州の沖合で取れる魚たちの未来を犠牲にして、成り立っている命なの。
さいしゅうされて標本にされて批評されて製本されたら、
ただの性本能のせいにされて、消えてしまうの。
埼玉の国でさくらがさいたわ。
さくさくさくさくさいてくの。
さらけさらけた、更科の。
――中宮定子も笑っていたわ。
竜宮の国におりたったわたしは、
竜恐たちを、竜胆の花とみちがえて、
間違える横目に、きれいなスミレ色のカーディガンをかかえて、
まさかりをかついだ竜胆たちが、
爬虫類のようにシュウシュウ湯けむりをたてている、
そういう林道をさまよっていた。
まさかそこにはあなたが穴のようになって、
立ち並んでいるなんて知らなかったの。
――ねえ、わたしを無私にさせてしまわないで。
――わたしを無数に増やしてしまわないで。
羽医者たちが呼んでいる。
それはそれは、
最高に病んでいるサイコヤロウのことづてだったの、
わかわかしくなって、
かわかした手をつないで傘をさしたら、
河は増水して、大雨洪水注意報が出てしまうでしょう。
そんなの気にしてなんていなかった。
だって体中から河が咲く、河咲病になっていたから、
オオミズアオの、香水注意警報をきいていたの。
それはそれはなめらかなクリスタルの容れ物だった。
わたわたしているよりはたわたわしている方がいいといった。
きっとわたしたちは逃がれていけるわ。
だってわたしたちはすきとおった匂いがするのだから。
わたしはわたしは、
きっと最後には泣き止んでいる、サイコヤロウに戻ったの。
(2017年)
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