ぼくはかみさまにささげるしをつくるよ。しはつりばりみたいなかたちをしてるから、かみさまののどもとにひっかかって、つりあげられるんだ。 でもかみさまなんていないってきみはいうね。かみさまはことばだって。でもことばってなんだろう?いないってなん…
「ニセキレイな黄鶺鴒(きせきれい)が奇跡の霊になって奇声をあげている、蒸し蒸しした湯圧のふしぶしで、赤い色の紅玉たちに点綴されている、水のような宝石になった虫たちがつぎつぎにしたたっている、雨林(うりん)の合間で、アマテラスの花をちぎって…
あなたのかんばせの道沿いは、柵と策とで囲まれていた。その溝の口の駅に水のように澄んでいる人が、自分をポケットから落としてしまった時にできた、切り傷のついた、縁取りを気にしながら正しいことを言っているのに、いつでも気圧されてしまうから、 わた…
さいしゅう かいけつして、カンガルーの国に、移送されたわたしは、むしとりあみで舗装したみちを、アルコールなしで、ゴールをめざした。わたしを無視して、無私なわたしはたわしでよかった、たわわになった、かたわでもよかった。大地の上で。 大事なこと…
ミンカでミントがミンクの毛触りをして、虫のしずくのように、ひとみをみたしていたのを、まなかいにして、すべりだいを呑み放題にしたような、転落していく人生を飲みほして、永遠に若返ったの。 だからたからものをたかりにやってくる、おたかくとまったハ…
彼はあの冬にここからいなくなったそしてフィクションの世界の住人になった彼がたどり着いた場所について、きみは考える きみはこの寒い星にきた異邦人だと感じるなぜ人に意識があるのだろうどうして人は、うまくいかない時にだけ理由を考えるのだろう彼は命…
それは随分古い、昔の話だった。まだ帝(みかど)が京の御所におわして、けれどもこの国の権力は武家政権のものだった時代の、遠い話だった。時代の趨勢を決める、大きな合戦が関ヶ原で起きた。血と硝煙と、人馬と土ほこりとがあたりに立ち込め、悲鳴と怒号…
――するるするると、曲がりくねって伸びていく、蔓草たちに取り巻かれている、にぎやかな街角が、そこにあります。 様々に着飾った人々の群れを縫うようにして、どこまでもどこまでも歩いていきます。 そうしてそうして、曲がりくねった坂道を昇ると、濃い緑…
ひとつの戯曲を思いつく。「エデンの林檎のアップルケーキ」って、いうタイトルの戯曲。その舞台では、原罪は砂糖漬けにされている。知の背徳は、シナモンの匂いを薫らせる。――苦い紅茶で口直しするために、人類は荒野に追放される。荒野でハーブを育てるた…
クリスマスだ。街は人でたくさん。だけれど僕はもうたくさんだ。結局なんにもなりはしない、どんな音楽が流れていても、どんな本を読んでも、画集を紐解いてみても、心が晴れることなどある筈もない。 新宿の街のスクランブル交差点からストリートヴューを見…
1 記憶の奥底に、黒い漏斗のように広がっている、地下の世界には地下鉄が走っている。地下鉄は、蟻塚の中身のように、複雑な迷路のように展開されている。 ――わたしは、その地下鉄の中にいる。遠くから見ると、きっと、小さい、こども向けの人形のようにや…
さまざまなもの思いに耽りながら、わたしはしだいに眠りについた。するするするする、ゆるやかにしずかに、吐き出されていく蜘蛛の糸みたいに。織野姫子、という名前で呼ばれる、普段の自分から、遠ざかって。そのくらがりから、たちこめてくる水の匂いは、…
平坦な水面から、白い蒸気が浮かび上がっていき、天上から引っ張られていくのに従って、そろそろそろそろ、という風情で、ゆるやかに、たおやかな速度で曲線から直線になっていき、あたりをひょろひょろ見回してから、抜き足になって、そろそろそそろと歩い…
――小さな白い絹糸たちが、うつむきがちに、明滅している、しんしんと、幼い鳥の羽根音みたいな音が、ずっと続いている。窓の外では、しとしとしとしと、雨が降っている、水素と酸素の混ぜ合わさってできた、あの顔見知りの球体たちは、連綿とした白い糸たち…
青褪めた顔をして、みどり色をしている、風の分子たちは、喉と鼻腔に痛みを与えた。 彼の空間は、一度にすかすかになってしまった。 浸透圧が一気に低くなったような気分が、自分の体中を内側と外側から、被覆するように包み込んでいくのを感じた。あるはず…
散らばる事をやめない太陽の光の自然さを感じていた。けれどもそれは普段のようではなかった。おぞましいくらいに、やさしくて明るく、冷たい輝きだった。――僕は自分自身の心理的なリアリティーの中にあまりにも沈みこんでしまった、そう彼は感じた。――風景…
中央線の、高円寺駅から北口を十五分程度歩くと、街の賑わいは消え失せて、昭和の匂いをそこここに残した、人通りの少ない――鄙びた街並みが顔を覗かせます。――小さな建物の入り組んでいる、奥まった場所には、長屋のような、旧い集合住宅があります。 その古…
――履いている靴のつま先のあたりで、微かな土埃たちと一緒に、湿気の抜かれたそよ風が、そよそよとふきつけてきます。そこいらにまばらに生えている、淡い色をしたイネ科の植物たちは、鋭い葉先を繊ケと鳴らしています。 植物たちは、そうすることで、風の精…
春の夜だった。上野公園では外灯の照明が仄かに呼吸していた。瑣末な動きが秋爾(しゅうじ)の目にとまった。――植え込みの躑躅の茂みでは、上下左右に込み入っている木の葉や枝枝の間隙に、透明な投網でできた足場が、十重二十重にも指し渡されていた。そこ…
2018年の注記:以下の文章は2011年にクレマスターという場所で行われた発表の原稿です。当時のわたしはフランスの精神分析家である、J・ラカンに私淑していました(ちなみにこのころわたしは伊藤嵯輝(いとうさき)という名前を名乗っていました)。こ…
赤い柘榴の実が黒い道路に落ちているその傍で風に揺れているカタバミの花のように白いきみの亡霊は金木犀のように甘い匂いを薫らせていたっけ藍色の枯葉が薄い桜色の空に散っていくのを背にしてハチミツの色をした豊かな髪の毛が湿った空気に輝いていたっけ…
自分が殺されてしまったことを知った神様が両眼から三つ編みの血の雫を流しているとても高い塔の見晴らし台で緑色の水溜まりに寝そべって裸になった彼女の心はゆびさきで瞳の奥に絵を描いているきみの母親はまるできみと瓜二つ淡い紫色とスミレ色が混ざり合…
あめつちの、はじまるころから、あわのようにさきみだれている、あねもねに、あけびにあざみにあいりすのはな、あかつきの、あえかなひかりのあやおりもように、あたためられて、あけがたいろに、そめられている、あぜみちを、あせばむからだであるきつづけ…
1、レシート わたしは昔、テーブルの上に、放って置かれて、丸められているレシートの塊みたいに、ぽつんと一人で生きていられたら、どんなにいいかと思っていたっけ。でも、その思い出のイメージも、今はもう、短い言葉に纏められ、くしゃくしゃにされ、球…
ほのじろい水のつぶてが、たわたわとうちつけてきて、気立てのよかった裸の気分を、すっかりこそぎ落としていく。かすかな衝撃の連続が、自我を繰り返して消滅させては再生させていく。向こうで開いた、脱衣所に通じるドアのむこうに、見覚えのある女の影が…
皿から皿へ、次から次に、ナイフが、フォークが、フルーツナイフやフィッシュナイフが、サラダフォークやミートフォークが、映って、移って、何度でもきらめていく、いろいろな人の顔つき、でも、誰の顔かは思い出せない、瞳から瞳へ、フォークが映り、ナイ…
というわけで予定を変更することにしました。 え?何がって? まあまあちょっと聞いてくださいよ、そこのあなた。 10月に今まで書いた詩や小説その他をnoteにまとめる、ということをしました。 詳しくはこちら↓ pagansynonym.hatenablog.com ---------------…
今回詩や小説などの作品をまとめたことについて 1 今回詩や小説などの作品をまとめたことについて、 序文も書いたんですがもう少し補足して詳しく書きますね。 個人的には、詩や小説の発表の在り方として、130個全部一度に公開するというのは、個々の作品…
こんにちは。 はい、というわけで、今まで書いたものをまとめてみました。 そうですね、タイトルの通りです。 note.mu ちなみに伊藤佑輔はペンネームです(本名の漢字を変えただけ)。 前回のブログ記事で、「これからは詩や小説も載せます」と書いてました…
この記事を読んでいる皆さん、こんにちは。 このブログを始めてからというもの、音楽以外での記事ははじめてですね。 突然ですが、小説を書きました。 恋愛小説めいた対話形式の、私小説といったところかな。。 今まで自分が公開してきた曲の歌詞が好きな人…